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#7「走れメロス」太宰治 2019/1

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読んだ後これほどすがすがしい気持ちになれた小説はかつて無かった。とてもシンプルで、無駄な文章やもってまわった表現の無い、という意味では、私は夏目漱石の小説よりずっとこちらの方が好きだ。

 

友情を守り、それを証明するため、王に約束をするメロスの青年らしい心意気。友のため走りに走り、川を泳ぎ、王の手先の邪魔者を振り払い、前へ前へと進むメロスの純情。

 

しかし私は、そのメロスの実直なる大真面目ぶりに、不謹慎ながら読んでいてふと笑ってしまったのもたしか。

いや、それもまたこの小説の魅力だ。

たとえば、話の冒頭から、竹馬の友のセリヌンティウスを、本人の事前の了承も無しに人質として差し出し、しかも自分が三日で戻ってこなかったら絞め殺していい、と勝手に王に約束している事からして、ちょっと考えると無茶苦茶な話だ。

しかも読み進んでゆくと、メロスは王のもとに戻る道々、けっこうさぼって寝たりしている場面も出てくるのも笑える。

 

しかし、そんな細かいところもあまり気にならないくらい、ストーリーは力強く、爽やかな読後感を感じるに至るのだ。